市民ミュージカルって何だったのか? 夢から覚めて思うこと

 

 宮澤賢治は語ります。

 

……われらのなかで芸術家とはどういふことを意味するか……

職業芸術家は一度亡びねばならぬ
誰人もみな芸術家たる感受をなせ
個性の優れる方面に於て各々止むなき表現をなせ
然もめいめいそのときどきの芸術家である

 

 「芸術家」は職業ではない。美しさに感動する感性を持つすべての人が芸術家だ。心と心で感じ合うことこそ本質なのではないのか?そのために我々は何をするのか?自分の心からほとばしる表現をするのだ。それが我々が芸術を自分たちの手に取り戻す方法なのだ。そして賢治は「職業芸術家は一度滅びねばならぬ」と宣言します。

 今回の市民ミュージカルで、日々の仕事を終えて練習に集まった仲間。共通するのは「やってみたい」という心意気。それはまさに賢治が目指す「我々のための芸術」を作り出すプロセスだったのではないのだろうか?それこそが尊いことなのではないだろうか?

 市民ミュージカルは劇団のそれや声楽家のオペラではありません。でも「職業芸術家」の物差しで測らねばならないと譲れない人がいるのも事実でしょう。ではありますが、そもそもそうやって比べることにどれだけの意味があるのでしょうか?その答えはきっと「あやの見た空」をご覧いただいたみなさんと舞台に立った我々の心と心の触れ合いがそれぞれの心の中に何を残したのか、それに尽きるのではないでしょうか。

 「またいつか、どこかで」を最後に今回の公演のブログを閉めたいと思います。

 長文お付き合いいただき本当にありがとうございました。

(塩野潔:劇中では着陸場作ろうぜ!宣言をした村長役でした)